分 煙 壁 新 聞 6. 1998.5.25 分煙堂本舗 〒115 東京都北区神谷3−28−12−2B ・Fax/03−3901−7131 ★厚生省検討会第5回/  5月22日、厚生省「21世紀のたばこ対策検討会」第5回が開催されました。 大蔵省推薦委員4人(大河・水野・柳田・山崎)。他は厚生省推薦委員。 富永祐民〔愛知県がんセンター研究所長〕=(資料説明:若年で喫煙開始するほどリスクが高い) 五島雄一郎〔東海大名誉教授・禁煙医師連会長〕=(資料説明:若年発症の心筋梗塞患者ほど喫煙率が高い) 山崎正和〔東亜大学大学院教授〕=ある要因との関連を調べるのには、要因を純粋化する必要がある。他の因子  をどうやって捨象するのか。 富永=疫学的には常識的に重要な因子を選んで、多変量解析して調べる。 内山充〔日本薬剤師研修センター理事長〕=今の議論も情報提供の一部。この会議ではややもすると「証明され  てない情報は扱うべきでない」という議論があるが、そもそも人体実験というようなものはできない。 島尾忠男〔座長/結核予防会会長〕=分煙の進め方について、具体的にご意見を。 内山=分煙はただ離れて吸っていればいいというものではない。分析レベルで分かるような分煙に持って行って  もらいたい。 富永=情報提供が非常に大事。一般的には主流煙より副流煙の方が有害物質の濃度が高い。タール・ニコチンだ  けでなく、CO等のデータも開示してほしい。 大河喜彦〔JT取締役〕=データ開示には特に反対するものではない。副流煙は希釈された形で吸うので、「主  流煙より副流煙の方が有害だ」と言うのは問題がある。 内山=分煙を今のレベルに留めないでほしい。体内に入る物に対してはもっときめこまやかにやった方がいい。 山崎=この場で誰もが同意できるのは分煙。新聞によると、JTは訴訟を起こされるそうだから、法廷では医学  論争をやってもらって良い(が、この場で医学論争をやると平行線に終わるだけだ)。「煙が嫌だ」という人  が多数いるのは事実だ。但し「嫌いだから制限せよ」が風潮として起こるのは問題。米では嫌香水運動なんて  いうのもある。タバコの場合ははっきり臭いがするということを考えれば、分煙は必要。分煙は精神論でやっ  てもしようがない。国が分煙施設の財政援助を与える等、財源はタバコ税の一部を還元すればいい。要はマナ  ーの問題だ。歩行喫煙・ポイ捨てが増えているのは、吸う場所がないからだ。戸外に灰皿を設ければ良い。 内山=「(吸殻を)捨てるのは自由。後始末は国が」というのはどうか。目で見た分煙でなく測定した分煙が必  要。今の程度の分煙で大丈夫かどうか、厚生省は調べてほしい。単なる好き嫌いでなく、健康被害の問題だ。 富永=目的税化してタバコを増税してもいいのでは。 大河=基本的には行政が分煙対策により積極的に取組むのは意味がある。一昨年「公共の場所における分煙の在  り方検討会」の報告が出ているが、実効性がない。ガイドライン化して分煙機器導入等も考えては。酒税は40  〜20%程度だがタバコは既に60%だ。これ以上タバコに税負担を求めるのはどうか。行政としては(カネでは  なく)知恵を出したらいいのではないか。 川口順子〔サントリー常務(生活環境部長)〕=目で見た分煙と測定した分煙の違いは何か。今、どれくらいの  (レベルの)分煙が行なわれているのか。分煙をきちんと判定する方法論がどこ迄確立されているのか。 内山=現在は臭いなど五感で判断できるレベルの分煙。分析レベルでなく、本当の分煙になっていない。航空機  の分煙は全く意味がない。レストランでは、形式的には分煙でも感覚的分煙でないというのもある。ホテルで  も前の客の喫煙で困ることがある。(分煙の段階は)1.形式レベル(形ばかり)2.感覚レベル(臭い等)  3.分析(測定)レベルがある。測定はダイオキシンより遙かに楽だ。 大河=(ポイントは)1.客観的指標があるか 2.分煙対策技術として確立されたものがあるか、の2点だ。  JRとの共同開発で、同じ車両で禁煙席に煙が行かない空調を「こまち」等で使っている。指標としては簡便  なものが必要だ。浮遊粉塵(ビル管理法の0.15mg/立米など)を当面の指標にしている。コチニン(ニコチン  の代謝物)の場合、尿検査等があるので難しいのではないか。今の所、指標が確立している所迄は行っていな  い。調査・研究が必要だが、当面は簡便な指標を使うということで宜しいのでは。 柳田知司〔慈恵医大客員教授〕=基本的な考え方を確認したい。タバコ煙の大気への放出は未処理でやってよい  か。分煙機器としては 1.煙の流れをコントロールする 2.煙(の有害性分)を除去する、の2段階あるが、  2は高くつくので、大気へ放出してよければ1を重点にしてよいのではないか。 大河=1・2の両方を備えたものが望ましいが、費用の問題がある。 柳田=分煙は非喫煙者に煙が行かないだけでなく、大気へ有害物質を放出しないというのも含まれているのか。 大河=問題成分を除去する装置も含まれているが、コスト面で簡便なものもある。 柳田=(1両しかない)グリーン車などはガラス等で物理的に仕切った方がよいのでは。 富永=分煙施設を設けることの他に、法令で吸ってはいけない場所を決める必要があるのでは。道路などはマナ  ー向上とともに、条例で取り締まらないと効果がないのではないか。 松本恒雄〔一橋大法学部教授〕=五感レベルの分煙ならコストがかからないのではないか。むしろ情報提供の問  題。そうすれば、客の要望次第でJRも(喫煙規制に)動くのでは。客商売なら客の声で動くはず。公共場所  は法令等でやればよい。市場原理でできれば、その方がコストが安くできるのでは。 柳田=コチニン・CO等はゼロが指標か。あるいは許容量というものがあるのか。 大河=ETS(環境タバコ煙)に着目した許容量はできていない。日本人は知的水準が高いし綺麗好きなので、  条例化よりも知恵を出すことを考えた方がよいのでは。21世紀は喫煙者・非喫煙者がいがみ合うのでなく、共  生する事を考えた方がよいのではないか。節度ある喫煙が求められるのでは。 富永=マナー向上でうまく行けばよいが、歩行喫煙等の現状を考えると、性善説だけではうまく行かない。一定  期間でうまく行かないなら、条例化が必要では。 川口=グリーン購入(リサイクル)を進める組織を作るのに、環境庁がソフトに関与している。いずれ条例が必  要になるかも知れないが、その前にできる事もあるのではないか。それ自体が教育・啓蒙効果を持つ。条例を  否定する訳ではないが。 櫻井秀也〔日本医師会常任理事〕=条例化には反対。もしそれで効果があるなら、未成年者喫煙禁止法が既にあ  る。健康被害レベルでなく、臭いのレベル迄やると広がりすぎる。禁煙法を作れば根本解決するが、そういう  問題ではないだろう。分煙もずいぶん進んできた。 矢崎義雄〔東大医学部教授〕=道路上喫煙の原因は「未成年の時安易に喫煙習慣を身に付けた」「ニコチンの習  慣性の強さ」の2つだ。閉鎖空間の分煙は分析レベルが必要だが、設備投資がかかる。喫煙者がスパスパ吸う  ために投資して良いのか。防煙(喫煙開始の防止)の面で言えば、情報提供がうまく行っていないのではない  か。情報提供による防煙が進めば、(その結果)開放空間の分煙も進むのでは。 山崎=基本的に櫻井意見に賛成。この委員会は構成上に難がある。健康を高く評価する人たちには禁煙法が理想  だろうが、健康を最優先に考えない人もいる。分煙なら一致できるが、「そういうのはまだるこしい」と言う  のであれば、多数決でケリがつく。 水野肇〔医事評論家〕=どうしてタバコだけが問題になるのか。例えば選挙運動の騒音は原稿書きの邪魔で、生  存権の侵害だ。北風論で「タバコをやめろ」でなく、太陽でマントを脱ぐ事もあるのでは。タバコは自分がや  めようと思わなければやめない。表示に「死ぬかもしれない」とあっても、「死ぬ奴は死ぬ。俺は関係ない」  と思うだけ。やめるインセンティブを与えることが大事だ。「タバコ吸ったら駄目」だけでは皆やめない。女  の人が「タバコ吸う奴とは付き合わん」とやればよいが、今は女が吸ってるから駄目だ。 矢崎=タバコをなくせと言うのではない。ある程度分別ある人が吸ってる場合は自己責任。狭心症・動脈硬化の  患者に「喫煙は駄目」と言うと例外なくピタッとやめる。山崎委員だって同様の診断を受けたらやめるだろう。 松本=「北風と太陽」論には賛成。どうやって自発的にやめてもらうか。未成年者喫煙禁止法を見れば分かる通  り、法規制だけでは守られない。広告の問 題もある。ソフトな方法を考えればよいのではないか。 山崎=タバコが健康に一定の影響を持つことを否定するものではない。私も医者に言われたらやめるかもしれな  い。だが、なぜタバコだけを、しかも国の政策としてやるのか。塩だって悪い。こうすると、最初の議論に戻  ってしまう。予防医学を社会政策として取り組むのは危険がある。 内山=「医療は治療だけでよい。予防医学は危険思想」というのはどうか。私はむしろ、これだけ体内に入って  いるのに、他の食品に比べ、なぜタバコだけが放置されているのか不思議だ。所管官庁もない。分析レベルの  分煙は費用もかかるし、すぐできるとは思わないが、情報として知っておく必要がある。 富永=成人病を生活習慣病と呼ぶようにしたのは、生活習慣が病気予防と関係があるからで、これには喫煙が深  く関わっている。骨子は防煙・分煙・禁煙(節煙)の3点。やめたいと思っている人が多いのだから、その支  援が大事だ。3つの柱は崩すべきでない。 大河=依存性について言えば、『ネイチャー』にモルヒネ並みと出て驚いているが、タバコは精神的には依存性  があるが肉体的にはない。精神毒性もない。タバコは長年定着している嗜好品で、最近出て来た化学物質とは  違う。タバコは食品ではないので、添加物は食品衛生法による規制は受けていない。国際的にもガイドライン  はない。情報提供の中身が問題だ。どういうものを情報提供するか、どういうものが客観的な情報かが大事。 島尾=諸外国の資料はどうなっているのか。 大河=今度出します。 島尾=防煙・分煙については出尽くした感じだ。次回は整理して議論したい。