分 煙 壁 新 聞 9.  1998.8.15.分煙堂本舗 〒115 東京都北区神谷3−28−12−2B    ・Fax/03−3901−7131 ★たばこ対策検討会最終回/8月7日、第8回(最終回)の会合が行なわれ、座長の「まとめ」(前  回の修正版)に対して各委員が意見を述べた。  「21世紀のたばこ対策検討会 討議内容のまとめ(案)」 検討会設置の経緯 <たばこ対策の現状> 我が国におけるたばこ対策は、21世紀に向けた総合的なたばこ対策の礎として平成7年に公衆衛 生審議会により意見具申された「たばこ行動計画検討会報告書」に基づき、「防煙対策」、「分煙対 策」、「禁煙支援・節煙対策」を3つの柱として、各実施主体の自主的なたばこ対策の取り組みを促 進するため、啓発普及を中心として取り組まれてきた。 <たばこ対策における今後の検討課題> 「たばこ行動計画検討会報告書」がとりまとめられた当時は、成人喫煙率が漸減するとともに、た ばこ消費量も頭打ちの状況であったが、最近、若年者(特に女性)の喫煙率の上昇、たばこ消費の拡 大、たばこ関連疾患による死亡者数の増大、それにともなう医療費等が問題となってきた。平成9年 版「厚生白書」は、「喫煙習慣は個人の嗜好の問題にとどまるのではなく、健康問題であることを踏 まえ、たばこ対策を一層推進することが求められている」と記載し、公衆衛生審議会により、今後の 生活習慣病対策において、たばこ対策を積極的に推進すべきであると報告された。 さらに、喫煙習慣とニコチンの依存性との関連や、たばこ煙の発がん性等の危険性、低タール化に 伴う健康影響について、国際知見や対策に変化もみられることから、我が国においても、これらの新 しい動向を考慮して今後の管理方策を検討するなど、適切な対応を図る必要がある。 <検討会の開催> 今後のたばこ対策のための具体的方策について提言を行うため、幅広い分野からの学識経験者によ り構成される「21世紀のたばこ対策検討会」(保健医療局長の私的検討会)が設置され、平成10 年2月24日より計8回にわたり、公開の場で討議が行われた。 〜座長のまとめ(案)〜  本検討会は、様々な立場の委員から構成されていることを考慮して、討議の成果をまとめる際に、 座長の責任において多数決を採用しなかった。従って、まとめは討議された事項、それに対する委員 の意見を中心に、21世紀のたばこ対策を進める上で主要な論点を整理する形式とした。今回の検討 会では会議と議事録を公開したので、報道関係者を始め一般の方々の関心が高く、毎回多くの傍聴者 があった。また、傍聴者や検討会の存在を知った方々から、将来のたばこ対策に関する多くの貴重な 提言が寄せられ、感謝している。これらの提言は、参考資料として検討会資料に付け加えさせていた だいた。 1.全般的な問題 喫煙の健康影響および諸外国の政府機関・国際機関等のたばこ対策への取り組みについては、多く の資料が事務局や一部の委員から提出された。喫煙者本人の健康影響として、肺がん、肺気腫、虚血 性心疾患など多くの疾病の発生や死亡が非喫煙者に比して増加することや、周囲の非喫煙者の健康に 対しても影響を及ぼすということが指摘された。しかし、たばこと疾病との疫学的な因果関係に対し て疑義を示す意見も提示された。たばこは一旦喫煙し始めるとやめたくてもやめられないという、た ばこ成分のニコチンに依存性がある。しかし、ニコチンには妄想や幻覚などの精神毒性はないことが 指摘された。 一方、たばこは個人の嗜好品であり、長い歴史を持ち文化としての一面もあることから、法的な手 続きをとらずに国家が介入するのは問題であるという意見が出された。これに対し、国民の健康を守 ることは厚生省の責任であり、発病前の一次予防対策に重点を置くべきであるという意見が出された。 特に、食品や医薬品、水、大気など他の公衆衛生上の規制の例に見るような、健康影響を及ぼす恐れ のあるものに対し、未然防止の観点から何らかの対応がなされるのは当然であるとの意見があった。 本検討会は、喫煙と健康の因果関係について学問的な討議を行うには適当な場ではないことを考慮 し、当初の委員の意見表明の中で、多くの委員から対策が必要とされ、討議の段階で検討課題とする ことに同意が得られた、喫煙経験のない国民、特に未成年者の喫煙開始をいかにして防ぐか(防煙)、 喫煙者と非喫煙者を分離する方策(分煙)、喫煙の健康影響などに関する情報提供のあり方などの問 題を中心に討議が進められた。 2.防煙 防煙の必要性、特に、未成年者の喫煙防止の必要性については、全員が一致した。我が国では未成 年者喫煙禁止法(明治33年制定)が存在し、未成年に対するたはこの販売者等に罰則規定が定めら れている。防煙対策は新たな喫煙者の発生を防ぐという意味で、長期的に見ても根本的な対策であり、 世界保健機関(WH0)の勧告を踏まえ、未成年者に対する販売禁止や広告・販売促進活動の規制、 価格政策などの対策が国際的に進められている。 成人は、一旦喫煙習慣がつくとなかなかそれから抜けられないとはいえ、喫煙に関して十分な情報 を与えられれば、その是非を自己判断して選択することが可能であるが、未成年者は、そのような判 断力がないものとして扱うべきであるという意見が出された。医師側の委員から、未成年者が喫煙す べきでないという理由について、喫煙開始年齢が早いほど、がんや虚血性心疾患など種々の疾患に対 する影響が大きくなること、妊娠可能な年齢の女性では妊娠中の喫煙が胎児に悪影響を与えるので喫 煙しないことが望まれることなどが、医学的根拠として示された。  未成年者の喫煙防止は社会全体で取り組むべき問題であるとともに、喫煙の誘因となるものは排除 すべきであり、次の事項が防煙の手段として検討された 2−1.たばこの広告・販売促進活動のあり方  我が国では、たばこ事業法(昭和59年制定)に基づく広告指針(平成元年大蔵省告示)を踏まえ、 たばこ業界が広告・販売促進活動に関する自主規準を定めており、従来から未成年者や女性を主たる 読者とする雑誌では広告を行っていなしこと、平成10年4月からはテレビ・ラジオ等の電波媒体で たばこ製品の銘柄名の広告を自粛していることが紹介された。  これに対し、印刷媒体や電車の中吊り、屋外看板などでの広告が最近増加していること、テレビの ドラマや新聞、雑誌の広告などで、たばこに対して良いイメージが未成年者に植え付けられているこ と、女性向け銘柄の広告が大々的に行われていること、また、マナー広告でたばこは大人のものと強 調することが、逆に未成年者に「大人に対する憧れ」としての喫煙を助長しているとする意見が出さ れた。 2−2.たばこの自動販売機のあり方  我が国では、たばこの自動販売機は設置台数が50万台に達し、零細小売業者の重要な販売手段と なっており、消費者利便にもなっていることが紹介されたが、消費者にとって便利であることが未成 年者のたばこ入手を容易にしていると指摘する意見が出された。しかし、たばこ事業法に基づいて、 平成元年以降、小売店を新しく許可する際に、店舗併設型以外の自動販売機は許可されなくなった。 小売組合が平成7年より自動販売機の深夜稼働を自粛していることが紹介された。これに対し、未 成年者の利用の少ない深夜の稼働を停止しても、未成年者の喫煙防止には効果が殆どないとする意見 が出された。酒類販売業界では2000年までに購買者の年齢が確認できない屋外の自動販売機につ いては、自主的に撤廃することを目標としていることが報告され、たばこ販売においても、対面販売 と年齢確認の徹底による未成年者喫煙禁止法の遵守、自動販売機による販売の禁止や設置場所の制限 の強化、販売自粛時間枠の拡大などを求める意見が出された。 2−3.たばこの小売価格のあり方 我が国のたばこの価格は国際的にみても安く、未成年者の購入を容易にしている要因であることか ら、価格を上げ、税収を確保しながら、未成年者の消費を減らすべきであるという意見が出された。 また、たばこによる超過医療費の負担低減や、喫煙者も利益を得る分煙環境の整備に充当するために、 たばこ税を増税すべきであるという意見も出された。一方、たばこは酒類に比べて担税率が高いこと、 たばこ税だけに着目して国際比較することには問題があることなどから、価格の問題は慎重に検討す べきであるという意見も出された。 2−4.社会全体の取り組み 防煙対策として、業界の取り組みだけでなく、家庭、学校や地域ぐるみの喫煙防止対策が必要であ るという事は全員が一致した。さらに、従来の知識重視の教育だけでなく、周囲から喫煙を強要され た場合の対処法の訓練や、広告のイメージとたばこという商品の本質の違いを見極める教育なども必 要であるという意見が出された。 3.分煙 分煙の必要性については、全委員が一致した。分煙は、受動喫煙の非喫煙者に対する健康影響を排 除するための措置であり、自己責任において喫煙する場合でも、他者へ危害を与えないことが大原則 である。これに関連して、多くの発がん物質や有害物質を含む環境中たばこ煙(ETS)に対して、 環境基準と同様の危険性管理の考え方を導入すべきであるという意見が出された。 諸外国では公共の場所や職場における喫煙規制が進められているが、日本でも既に、厚生省、労働 省、人事院、東京都等から、公共の場所や職場における喫煙の制限に関する指針が出され、一部の企 業で厳格にこの指針を実行している事例が紹介された。しかし、多くの職場やホテル、レストランな どでは実行が十分でないという意見が出され、特に、厚生省自らが職場の分煙・禁煙を積極的に推進 すべきであるという意見があった。  分煙環境の実現は、非喫煙者だけでなく喫煙者にとっても好ましいことであるとされ、今後分煙を 推進するために以下の事項が検討された。 3−1.喫煙者のマナー教育と条例の制定 マナー教育については、すでに吸い殻の投げ捨てをしないことを中心に行われていることが紹介 されたが、吸い段の投げ捨てや歩行中の喫煙など依然として多く見られる。このような喫煙者のマナ ーの悪さは、たばこ問題に対して強い態度をとる人が多い一因となっていることが指摘された。この ような行為は非喫煙者への健康影響だけでなく、火災の発生や他の歩行者、特に子供に対する危害の 点からも、喫煙者自らが慎むべきであるとして、マナー教育を強化する必要があるという意見が出さ れた。  業界もマナーの向上啓発に取り組んでいるものの、それを一層強化すべきであるという意見が出さ れた。それでもマナーを守らないものを規制するために、条例など法的な措置を採用すべきであると いう意見が提案されたが、法的規制は世論の動向や取り締まる側の意向などを考慮した上で、慎重に 決めるべきであるという意見も出された。 3−2.分煙の効果を判定できる客観的基準の設定 公共の場所や職場における仕切りや席の分離、空気清浄機の設置など、現在行われている「目で見 える」分煙の手段が、当初期待された非喫煙者の健康を守るという目的を達成するのに十分であるか 否かを検証する必要があるという意見が出された。そのためには、現在用いられている粉塵濃度や一 酸化炭素濃度では不十分であり、発がん物質や有害物質などを測定・評価できる客観的な指標の開発 および基準の設定が必要であるという意見が出された。 3−3.公共の場所での分煙の強化 公共の場所、特に鉄道・飛行機等の輸送機関における分煙はかなり進められているが、それ以外の 施設での分煙は不十分であるので、ホテルでの非喫煙階やレストランでの非喫煙席の設置、増設を求 める意見が出された。 3−4.分煙の経費の負担 喫煙場所の規制については、各々の施設管理者により措置されることが望ましいとの意見も出され たが、分煙が進まない要因の一つとして、分煙に関わる施設・設備の整備コストの負担者が明確でな く、原因者(汚染者)負担と製造物責任の原則により、たばこ税や価格により最終的にたばこ事業者 や喫煙者に転嫁してもよいという意見が出された。 4.情報の提供  たばこについて正しい情報を持っていない消費者に対し、たばこ製品そのものに関する情報や、喫 煙が人の健康に及ぼす危険性についての情報が提供されるべきである。必要な情報収集とその提供手 段について次のような議論があった。 4−1.提供すべき情報 4−1−1.たばこ包装や広告における表示 表示は消費者に対する最も直接的な情報提供の手段であるが、我が国の注意表示はたばこ事業法で 規定されており、文言はたばこ事業法施行規則で定められている。この点について、健康を所管する 厚生省がその内容に関与できないことを疑問視する意見が出された。現行の表現は抽象的で曖昧な表 現であり、肺がんなど具体的な疾患になる可能性、死亡する危険性の上昇、また、依存性があり一旦 喫煙習慣がつくとやめるのが難しくなることなどを含む文言にすべきであるという意見が出された。 また、外国のたばこ会社が日本で販売する製品に、本国のように発がん性や依存性について述べた警 告文言を記載することは、たばこ事業法施行規則で認められないが、定められた文言以外は記載でき ないとする点は問題であるという意見が出された。 たばこ製品に関する情報としては、我が国では、タールとニコチンについて、たばこ1本あたりの 主流煙中の含量として表示され、消費者の選択の目安となっている。この数値は国際的な標準喫煙条 件での測定数値であり、実際の喫煙者の喫煙様式とは異なることから、タールやニコチンの実際の摂 取量とは乖離していること、重量で主流煙の90%以上を占めるガス相に含まれる有害成分やその他 の成分が表示されないことなどが、問題であるとの意見が出された。 4−1−2.たばこ製品に含まれる添加物 我が国でも約600種類の添加物がたばこ製品に使用されており、添加物の安全性の確認はたばこ 産業自身によって行われていることが紹介された。しかし、安全性評価の方法の開示と、欧米のよう な添加物リストの作成と公開が必要であるという意見が出された。 4−2.たばこの危険性に関する情報収集・提供体制 厚生省は、喫煙と健康問題に関する報告書(いわゆる「たばこ白書」)を既に2回刊行するなど、 従来よりたばこの危険性に関する情報提供に努めてきたところである。しかしながら、世の中には広 告やメディアなどを通じて、たばこに対して良しイメージを持つような情報も多いという意見が出さ れた。今後も、客観的な情報を国民に広く分かり易く提供する必要がある。その基盤として、たばこ に関する情報提供体制の整備が望まれた。 4−3.その他  喫煙の健康に対する悪影響だけでなく、よい影響についても行政側から情報の提供が行われるべき であるとの意見も出されたが、全体としてみた場合、悪影響の方がはるかに大きいので、行政側が吸 わない人に喫煙を勧めることは容認できないという意見が出された。 5.今後の課題 今回の検討会では、たばこ対策を推進する立場、慎重な立場から多くの活発な意見が展開された。 結果としていくつかの課題、たとえば、健康問題としての観点からのたばこ行政のあり方や、学校教 育におけるたばこ問題の取り扱い、たばこによる室内あるいは屋外の空気汚染の実態調査とその方法、 表示や価格、成分など、二重標準を持つ多国籍企業の活動に関わる問題、そして、たばこ事業法とは 別個の公衆衛生上の法整備などについては、今回十分な議論を進められなかった。 厚生省は過去に薬害、エイズなどで早めの対応を行うことに失敗し、被害を大きくした経験がある ことが指摘され、その過ちを繰り返さないようにという意見が出された。本検討会としては、この報 告書を保健医療局長に提出し、その対応を待ちたい。 ▼座長「まとめ」(案)について  冒頭、伊藤保健医療局長(小林局長の後任)から挨拶があり、また、岩尾健康増進栄養課長(高原 課長の後任)から「たばこ事業法は注意表示の文言を定めているが、これは別の文言を追加すること を禁じているわけではない」との大蔵省の回答が紹介された。このため、「まとめ」の「4.情報の 提供」にある「(たばこ事業法施行規則で)定められた文言以外は記載できない」という部分は訂正 されることになった。大蔵省推薦委員4名(大河・水野・柳田・山崎)、他は厚生省推薦委員。 松本恒雄[一橋大法学部教授]=医学の素人がかなり入っていたのは、検討会が医学論争の場ではな  く、一定の医学を前提として議論する場と考える。未成年への教育は成年への教育と同じだ(防煙  は未成年だけやればいいという訳ではない)。今後、外国メーカーは警告表示を強めるかもしれな  い。危険がある場合はその理由も説明しなければならない。タバコだけを特別視すべきでない(槍  玉に上げる・不可侵視する、両方の意味で)。 内山充[ 日本薬剤師研修センター理事長]=前回の大河意見で座長案の「危険・有害」が「健康影  響」に書き替えられたのはおかしい。食品は(被害の)未然防止が科学者の責任。健康影響でなく  健康被害と言うべきだ。行政の不作為が罪を問われる時代。合議(多数決)でなく協議なのだから、  (結論は)会議の責任でなく個々人の責任だ。現在予測できることに対策を立てないのはおかしい。  (「健康影響」と)表現を変えても、リスクが上がるのは事実。これを否定するような発言は、後  世批判されるだろう。今後、具体的方策の検討に引き継がれることを期待する。 大河喜彦[JT取締役]=タバコは五百年以上の長い間に渡り定着した嗜好品だ。未成年対策には賛  成。喫煙者はマナーを守り、非喫煙者との共存を図る必要がある。客観的情報が提供されるべきだ。  座長案には合意されてないのに合意されたような表現や、一方の論点だけしか記載されてない箇所  がある。受動喫煙で目・鼻への刺激はあるが、肺癌等への影響はまだ不明確。注意表示は各界専門  家による客観的な表示で妥当と思う。「『加えて、タール・ニコチン表示もあり妥当』との意見も  出された」と追加してほしい。「今後の課題」は合意されていない。エイズ等近代科学の産物と五  百年以上親しまれたタバコを同列視はできない。 幸田正孝[社会保険協会連合会理事長]=座長案は個人としては不満もあるが60点は取れる。まとめ  に検討会設置の経緯があるのはおかしい。国民の意見を参考資料として付けるのはおかしい。「エ  イズ云々」は座りが悪く削除すべき。「今後の早急な検討を望む」との文言を加えよ。 島尾忠男[座長/結核予防会会長]=国民の意見は参考資料として付けずに、「貴重な提言が寄せら  れ感謝している」で切る。 五島雄一郎[東海大名誉教授/禁煙医師連盟会長]=内山意見に賛成。ただ、こうした意見の羅列だ  けでなく、厚生省の(取るべき)今後の対策も並べて貰えれば。タバコの害が明らかになったのは  近年。医療費の面からも対策を進めるべき。たばこ事業法を廃して、厚生省はタバコ規制法を設定  する努力をしてほしい。 櫻井秀也[日本医師会常任理事]=検討会の設置経緯は「まとめ」とは別に。 山崎正和[東亜大学大学院教授]=医学的議論をしない、というのは、ある医学者の意見を前提とす  る、というものではない。いろいろ発言して皆さんには迷惑をかけたが、私としても決して楽しい  体験ではなかった。座長案はある発言は選択し、別の発言は選択しなかった。「Aという意見が出  されたがBという意見も出された」と言うとBが強調される。合意があった部分でも、その理由ま  で合意した訳ではない。未成年喫煙禁止は当初は健康問題ではなく、「ガキはタバコ吸うな」との  ことだった。私らがいなければ紛糾もなく、限りなくトッテン委員の意見に近い結論が出ただろう。  (タバコに重税を課す)禁止税の発想は時代後れだ。 矢崎義雄[東大医学部教授]=大河委員の言う「客観的」は決して客観的ではない。マイナス情報を  販売会社が積極的にやって行くのは無理だ。最後に厚生省の姿勢を付け加えてほしい。 水野肇[医事評論家]=薬害エイズとタバコを同列に論じていいのか。「外国に比べて手ぬるい」が  検討会設置の厚生省の意向。今回の意見を聞いて、もう一回だけ座長が考えて、それでまとめたも  のは一任する。「山崎がこう言うた、大河がこう言うた」を考えて、もう一度だけ座長が考えて。 ビル・トッテン[ アシスト代表取締役]=「タバコは長年続いた文化」と言うが、阿片はもっと長  い文化。「長い歴史」は言い訳にならぬ。大河委員の「喫煙で百%死ななければ(害を)納得でき  ぬ」という姿勢は幼児的だ。彼は「科学的情報」という言葉を勝手に使っている。座長が今晩もう  一回考えて、まとめてもらえればいい。 仲村英一[WHO執行理事]=健康問題として喫煙をどう考えるかが設置の趣旨。室内外の汚染調査  について厚生省に宿題を出せ。 富永祐民[愛知県がんセンター研究所長]=防煙は喫煙開始、特に未成年喫煙をいかに防ぐか、とい  うことだ。大河委員は受動喫煙の害は立証されていないと言うが、タバコ会社から金を貰った研究  は(そうでない研究に比べ、害について)80倍も否定的な結論を出している。『タバコ白書』を早  急に改訂すべきだ。前回改訂から6年たち、新しい知見も沢山出されている。禁煙希望者への行政  ・医療の支援も重要。 柳田知司[慈恵医大客員教授]=依存性という用語は一般に馴染みが無いので「やめにくくする」に  変える。 島尾=タバコは多くの省庁が関わるが、これを調整する機関が無い。厚生省が健康問題として取組む  のは当然。疫学データを一般の人に理解して貰うのは難しい。生涯で考えればリスク増になるが、  一般人は近い未来を基準に考える。一律に禁煙を進めるのは無理だ。今後の課題はリスクをどうや  って解って貰うか。一律的でない個別リスクのアプローチが必要。妊婦への影響等は周知不十分。  喫煙者のマナーの悪さも問題。ポイ捨て防止の働きかけはあるが、歩行禁煙はまだ。大河委員はぜ  ひ呼びかけてほしい。今日の議論を受けて一部修正するかもしれぬが、原則としてこの「まとめ」  で。 水野=あまり付属資料や各委員の意見を付けず、座長のまとめに任せてはどうか。 幸田=賛成。これは検討会であって公聴会ではない。各委員の意見を付けるなら、今までの会合は無  用ということになる。 山崎=この検討会は構成の点で通常の審議会とは違う。分煙・未成年対策(理由は別として)・情報  公開の推進では合意できた。「まとめ」の文言には物書きとしてこだわらざるを得ない。結論が公  表される時には少数意見も漏れないようにしてほしい。 櫻井=会議そのものが公開されているので山崎委員の意見も公開されている。「まとめ」に任せる。 大河=委員の意見を添付するかどうかは座長に任せるしかない。 内山=追加意見はいくらでもある。最も言いたいことだけをちょこっと書かせて貰えれば。 島尾=議事は公開されているので、座長の責任でこうなったということで(任せてほしい)。 各委員=異議なし。異議なし。 山崎=それは多数決で決まったということにしてほしい。 島尾=本件に関しては多数決で決まったということです。 伊藤局長=過去にも健康増進栄養課長としてタバコ問題に関わった。検討会で合意された3項は厚生  省として責任を持って取り組むのは当然だが、残された課題にどう取り組むのかも大事。生産・販  売等いろいろな立場はあろうが、(厚生省は)国民の健康を守るという立場で積極的に取り組みた  い。検討会の在り方を教訓として、今後取り組みたい。 ▼多数決制を採用せず、タバコ会社の利益を代表する委員の意見も盛込んだため、両論併記的な報告 となりそうです。検討会の在り方やタバコ問題に関し、ぜひ皆さんの意見を厚生省にお送り下さい。  〒100-8045 霞ヶ関1−2−2 厚生省保健医療局健康増進栄養課/Fax.03−3503−8563