分煙壁新聞/No.20/2000年2月18日/分煙堂本舗・発行 〒115 東京都北区神谷3−28−12−2B/Tel・Fax=03−3901−7131 ■たばこ病訴訟第10回口頭弁論が2月15日10時より東京地裁で行なわれ、荒木照 夫原告団長と弁護団8名が出廷。原告側から津田敏秀氏(岡山大学講師)の疫学に 関する意見書が提出された。 ◆谷弁護士=JTは「原告は疫学を利用して特殊な主張をしている」と言っている が、これは的外れだ。疫学は確かな経験則で、喫煙と肺癌は80%以上の関係が認 められている。民事訴訟では一般に「高度の蓋然性」で立証がなされるが、「高度 」とはおよそ80%で線を引いている。(その線をクリアすれば)その他の立証は 不要だ。先の神戸地裁の尼崎公害訴訟判決でも、疫学証明を根拠にして被害を認め ている。津田氏は疫学の第一人者だ。「喫煙と肺癌の関係は完全には解明されてい ない」というJTの主張は明らかな間違いだ。(喫煙と肺癌の関係を認める)7万 にも及ぶ世界的研究がある。JTは「原告個別の(喫煙と発病の)因果関係の証明 は疫学では不十分」と言っているが、疫学は経験則の中でも数値によって表わされ る確かで厳密な経験則だ。その疫学で80%を超えているのだから、これに医学的 なことを加えても90%になり、98%になるだけで、(民事の証明という点では )無駄なことだ。逆に喫煙と肺癌は無関係という証拠は出ていない。疫学を否定す るのは経験則で裁判をやることを否定するものだ。喫煙が原因で肺癌になる割合( 曝露群寄与危険度割合)は90%以上、喉頭癌は85〜93%、肺気腫はほぼ10 0%で、あとは原告の喫煙を立証すれば足りる。JTが「疫学証明では不十分」と 言うのは、高い確率の証明を度外視しており、間違いだ。WHOも「喫煙が肺癌の 原因になっていることは、科学的に疑いの余地がない」と認めており、米フィリッ プモリス社もホームページではっきり認めている。  というわけで、本来こんな所は争点ではない。JTが明らかな科学的事実を争う というのは、原告の主張の正しさを示すものだ。我々はこの程度の(低レベルの) 議論をするつもりはなかった。国も(因果関係に関する曖昧な態度をやめて)きち んと認否を示してほしい。 ◆裁判長=今後の進行は? ◆伊佐山弁護団長=原告本人の尋問の他、津田氏の証人申請をしたい。その他を含 め、次回までにまとめて方針を示す。すでに原告2名が亡くなり、深刻な事態を抱 えている。早期に尋問の予定を組んでほしい。 ◆裁判長=(被告側に)本人尋問に異議はないですね? ◆JT代理人A=差支えないが、まだこちらの主張が済んでないので、検討させて ほしい。原告側は「原告個別の議論はする必要がない」という論法のようなので、 多分(JTの)反論があろうと思うので、検討させてほしい。原告の過失関係の主 張について、随分時間と労力が必要だ。 ◆裁判長=次回まとめられるか? ◆JT代理人A=そのようにする。 ◆裁判長=次回は4月25日。午前中いっぱい取ってあるので、原告お一人くらいは 訊ける。 ◆伊佐山=とりあえず、次回荒木さんを尋問したい。 ◆JT代理人A=反対尋問も次回ということか? 無理なお願いだが、(反対尋問 は)6月ということでいかがか。 ◆裁判長=次々回でどうか? ◆伊佐山=了解した。とにかく早めにお願いする。二人ぐらいまとめて。 ◆JT代理人A=6月下旬ぐらいにしてほしい。準備が間に合わないので。 ◆裁判長=二人で2時間あれば。被告の準備もあるので6月13日の午後でどうか? ◆伊佐山=結構だ。 ◆JT代理人B=差支える。 ◆裁判長=6月27日は? ◆JT代理人B=結構だ。 ◆伊佐山=6月13日に入っている予定をずらせないか? ◆JT代理人B=株主総会の準備なので、ちょっと……。 ◆伊佐山=13日の午前中はどうか? ◆JT代理人B=午前なら構わない。 ◆JT代理人A=6月27日の午後にたっぷり時間を取った方がいいのではないか? ◆伊佐山=13日の午前中にして、時間が足りなければ別途考えるということでどう か? ◆裁判長=では、そのようにしましょう。 ◆JT代理人A=原告の病歴等の詳しい資料の提出を求めるかもしれない。今月中 に(尋問の)候補者を教えてほしい。 ◆伊佐山=承知した。 ◆JT代理人A=カルテも提出してほしい。 ◆伊佐山=それは考えていない。  [10時37分閉廷] *健全な裁判を損なうおそれがありますので、引き延ばしに注意しましょう。 ………………………………………………………………………………………………… ●映画『インサイダー』(東宝東和配給)封切り決定! 米タバコ大手B&Wで有害物質の研究をしていたワイガンド元幹部がタバコ産業を 告発した実話をもとに製作され、全米で議論を呼んだドキュメンタリー・ドラマ。 関係者全員が実名で登場する(主演アル・パチーノ)。彼の証言は米50州とタバコ 産業の和解(約2640億ドル支払い)に決定的な影響を与えた。世界禁煙デーに向け ての日本公開で話題を呼びそうだ。 《日程》……………………………………………………………………………………… ▼3月17日(金)18:30=分煙の会 定例会【ひまわり館(神保町区民会館)】 ▼4月25日(火)10:00=たばこ病訴訟・口頭弁論 【東京地裁627号法廷】 ▼5月31日(水)=世界禁煙デー(〜6/6禁煙週間) ▼6月13日(火)10:00=たばこ病訴訟・口頭弁論 【東京地裁627号法廷】 ■「健康日本21」資料希望者は下記A・Bの別を明記して分煙社会をめざす会迄 ◆資料A(総論案+タバコ第3案)=600円/◆資料B(タバコ第3案のみ)= 200円 ■健康日本21「喫煙率半減」の看板はずす 2月17日に開かれた厚生省の健康日本21企画検討会(座長/高久史麿・自治医科 大学学長)で、原案の「たばこ消費量半減」「喫煙率半減」の文言を削除する方向 が決まった。検討会の議論のほとんどはタバコ(特に「半減」の部分)に費やされ 原案を修正した3案について討議された。目標・スローガンを示す案1と、主に手 段を示す案3を同列に置いていずれかを選択させるという少々ズレた議事進行のた め、議論が深まらないまま全委員が意見表明をした結果、案1を支持する者7名、 案3を支持する者24名となった(別掲「たばこ目標値についての諸案」参照)。な お、一連の検討会では以下のような意見が出された。 <2月3日/健康日本21企画検討会>……………………………………………… ▼「喫煙率半減」は国の思い切った姿勢を示すという意味で重要。▼国民の大多数 は対策推進を望んでいる。「半減」は守るべきだ。▼「嗜好品のタバコをとやかく 言うな」と言うが、嗜好品と言えば全部嗜好品だしライフスタイルの問題。それは 「健康日本21をやめろ」と言うに等しい。▼半減では生ぬるい。▼保健所など現 場の人たちに「半減」は浸透してるし、勇気づけている。マスコミにも紹介されて おり、今さら看板を降ろすわけにはいかない。▼タバコのことで健康日本21が壊 れてしまってはいけない。学問だけの問題ではない。応用が大事。▼政府・自民党 には反対論もあり、全か無かにならないように。議論は議論として調整を。▼科学 的な数値とスローガン(喫煙率半減)を分けて議論すべきだ。▼タバコの害は非常 にはっきりしている。「半減」をあえて変える根拠はない。▼「半減」は変えるな <2月10日/健康日本21計画策定検討会>……………………………………… ▼国民への呼びかけだけでなく、国がやるべき環境整備も大事。WHO枠組み条約 への準備の意味も込めて。▼健康日本21の全体性が大事。「半減」は突き放した 感じ。▼情報提供をした上で国民の合意ができる(「半減」よりまず情報提供を) 。▼タバコだけ目標値を出さないのは整合性に欠ける。▼力点を未成年に置くのも 一つの戦略。「半減」は根拠に欠ける。▼国の役割・決意を示す姿勢がないと国民 に信頼されない。▼案1に案3を入れれば良い。私たちの歴史は「運動・休養・栄 養」と(タバコを避けて)大蔵省に気兼ねして嘘をついてきた歴史。血液製剤でも 同じだった。「半減」の貫徹が重要。▼案3が具体的で良い。具体的にやらないと 効果が出ない。▼反対意見が5万来たというが、タバコ業者がどんなに頑張っても 5万人ということで、サイレント・マジョリティーは賛成。ホームページでも示し ているものを、5万人の反対で引っ込めたとあってはまずい。▼スローガンでなく 到達可能な数字を。▼各地域で健康日本21を基にステップアップしようとしてい る。それに水を差すのはいかがか。▼省庁間で検討しなければ。現状を考えて。英 でも過大な目標設定はしていない。▼到達可能なことだけやっていては進まない。 ▼今できるかどうかで考えてはいけない。▼具体性がないスローガンでは抽象的な 話になる。▼議会がどう対応するかは別問題。検討会は検討会として科学的に世界 の動向を基に案を示すべき。 ●柳川洋座長(埼玉県立大副学長)=一本にまとめるのは難しい。出た意見を企画 検討会に伝える。私としては案3をベースに。反発を与えない配慮をして案1に近 づければ。 <2月17日/健康日本21企画検討会>…………………………………………… ▼業界の反対は初めから分かっていた。科学的な目標は喫煙率ゼロ。10年でゼロ は非現実的なので「半減」。国民の健康を守る観点から目標を掲げるべき。なぜタ バコだけ目標設定が駄目なのか。健康日本21の柱で最も有効な策だ。▼策定検討 会では、反対とぶつかって何もならなくなっては、という意見が出た。(半減に) 賛成6・反対7・無表明8と割れた。▼保健所長会では「半減」の目標を降ろされ たら大変困るということで一致した。▼国民の嗜好を規制する印象を与えるのは得 策でない。市町村個別の判断で良いのでは。「半減」で健康日本21が危うくなる のは避けるべき。▼保健センターという実施する立場から見て、今度は国を挙げて (半減という目標で)取り組むということで現場はやり易くなる。▼タバコは依存 性薬物。嗜好品と考えるのは無理がある。▼半減は成算があるのか。世論を2分す るより7割が賛成する案3が良い。▼国家の強制に対するアレルギーがあるのでは 。半減は目標値というよりスローガン。やれる所がやれば良い。▼タバコは嗜好品 でないという周知徹底のために案3。▼北風(半減)より太陽で。▼国民に納得し てもらう点で3。▼現実論で3。▼具体的なので3。▼明るく楽しく愛される国民 運動として3。▼環境作りがあって初めて目標値がある。▼目標のためには手段が 必要。第一歩として3。 ●座長/案1=7名・案3=24名で、全体としては案3となったが、文章の中で 是非「半減」という言葉を入れてほしい。タバコは嗜好品でなく薬品である点を( 世界的に認められていることだが)強調してほしい。合意形成という意味で、案3 で調整ということになる。 「健康日本21」に寄せられた主な意見(厚生省事務局まとめ/タバコのみ抜粋) <嗜好、個人の権利> 1.たばこは定着した大人の嗜好品である。国民の趣味嗜好を国家統制するのは問 題がある。 2.健康への問題は喫煙者自身の問題。副流煙の問題等はモラルの向上で対応すべ きである。 3.たばこを吸う人の権利も尊重すべきである。 <目標値> 4.数値目標を掲げて国民の生活を誘導しようとしているのではないか。 5.半減という数値目標の根拠は何か。 6.未成年者の喫煙は法律で禁止されており、喫煙をなくすことを目標とすべきで はないか。 <経済的影響> 7.たばこの税収が減少するのではないか。 8.たばこの消費量を半減することになると、たばこ耕作農家への影響は大である 。 9.たばこの消費量を半減することになると、たばこ小売業への影響が大である。 <その他> 10.一方的にたばこを「有害な商品」であると断じている。 11.たばこは本当に百害あって一利なしなのか。 12.アルツハイマー病に効果があるとの報告もある。 13.ストレス解消による精神的な効果も無視できない。 14.麻薬中毒者への防波堤となっている側面がある。 15.たばこの有用性を公にできない昨今の世情は不気味である。 16.喫煙の効用や有害性を否定する情報についても、勇気を持って国民に提供すべ きである。 17.病理学的に喫煙が健康に及ぼす影響については証明されていない。 18.疫学的な根拠のみで、喫煙の健康影響を主張するのは無理があるのではないか 。 19.税収とは切り離し、たばこをもっと健康問題を中心に据えて扱い、大蔵省では なく厚生省が取り扱うべきではないか。 20.たばこは嗜好品ではなく、「依存品」である。 ………………………………………………………………………………………………… 〜「たばこ目標値」についての諸案〜 [原案]*未成年の喫煙をなくす。 *成人喫煙率を全体として半減させる。 国民一人当たりのたばこ消費量を半減させる。 [案1]*未成年の喫煙をなくす。 *成人喫煙率を全体として半減。 [案2]*未成年の喫煙をなくす。 *全ての禁煙、節煙を希望する者が、禁煙支 援プログラムを活用できるようにする。 [案3]*喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識を普及する。 *未成年の 喫煙をなくす。 *公共の場や職場での分煙を徹底する。また、質の高い分煙につ いての知識を普及する。 *禁煙、節煙を希望する者に対する禁煙支援プログラム を全ての市町村で受けられるようにする。