『分煙壁新聞』第28号[P] 2001年8月15日   分煙堂本舗/分煙社会をめざす会 〒115 東京都北区神谷3−28−12−2B   Tel・Fax=03−3901−7131 ■たばこ病訴訟の第17回口頭弁論が7月17日 13:30、東京地裁  で行われた。39枚の傍聴券に39人が並び、無抽選となった。荒木  ・山本原告と弁護団7名が出廷。津田敏秀証人(岡山大学大学院  医歯総合研究科社会環境生命科学専攻)への反対尋問が行われた。 ◆田中清(被告JT他3名代理人)=[大変早口で尋問]89年に  大分協和病院に勤務しているが、臨床経験はこれだけか?    ◆津田=大学病院時代も少しある。    ◆田中=肺癌・肺気腫は何名ぐらい診察したか?    ◆津田=肺癌5名以上、肺気腫1〜2名。    ◆田中=肺癌患者の解剖に立ち会ったか?    ◆津田=手術はあるが剖検は無い。    ◆田中=津田意見書に「剖検すれば(喫煙者の)肺が黒くなるほ  ど煙に曝露され…」とあるが?    ◆津田=実際に経験した事は無いが実習と本で(そう理解した)。 ◆田中=それがタバコによるものとどうして判るか?    ◆津田=そう言われると口ごもるしかないが、喫煙状況等を考え  て判断する。    ◆田中=時間が無いので簡潔に答えて下さい。乙号証(被告側提  出証拠)の論文に「喫煙者・非喫煙者の肺の黒色度は等しく、肺  内黒化に影響するのは加齢等による」とあるが?    ◆山口弁護団事務局長=日本語のテストか? 質問をしているの  ? 端的に訊いて下さい。    ◆津田=何学会の論文か? 私は見ていない。    ◆田中=病理学・細菌学を専門にやっていたことは?    ◆津田=無い。    ◆田中=「原告らのカルテを見た」と言うが、診察は?    ◆津田=していない。    ◆田中=会ったことは?    ◆津田=名刺を交換した程度。    ◆田中=喫煙が(病気の)原因とどうして判ったか?    ◆津田=それは診断の問題。診断が正しいかどうかは私の論ずる  ことではない。    ◆田中=原告の喫煙状況が間違っていたら、寄与危険度割合が違  ってくるのではないか?    ◆津田=その通り。    ◆田中=前回の証言で「岡山県東南部肺癌調査で、特に肺癌と塵  肺について調査した」とあるが?    ◆津田=その通り。    ◆田中=塵肺と肺癌に関し多数の論文を分析したものか?    ◆津田=はい。    ◆田中=喫煙を交絡要因(交絡因子)として調整しているのは、  34論文中4論文、つまり12%程度ですね?    ◆津田=はい。    ◆田中=喫煙と肺癌の関係を調整するのは疫学では稀という事か? ◆津田=曝露群・非曝露群から喫煙データを集めると手間がかか  る。集めた方がいいが、そうしない事もある。    ◆田中=特に喫煙と肺癌の関係について研究をしていたのか?   ◆津田=交絡要因候補として調べていた。同じ手続きなので、「  やっていた」と言える。受動喫煙と肺癌の関係は、特に90年代に  多く読んだ。    ◆田中=研究していた訳ではないでしょ?   ◆津田=何をもって「研究」と言うか? いま喫煙と肺癌の論文 を出したところで目新しくないので、そういう無駄な事はしない。 いま教科書に載っているような事を研究する人は殆どいない。 ◆田中=甲号証(原告側提出証拠)の『新しい疫学』の疫学の考 え方はどう思うか? ◆津田=疫学の定義・考え方が古くて狭い。 ◆田中=古くて使えない? ◆津田=学生ならいいが、大学院生は新しい英文のをきちっと読 んでほしい。 ◆田中=乙号証の疫学の考え方はどうか? ◆津田=疫学の業績の無い学者の書いた事はいいとは言えない。 ◆田中=治療は臨床医学に拠り、予防は疫学に拠るという考えは? ◆津田=間違っている。治療・予防のどちらも疫学が絡む。 ◆田中=「疫学は、人間集団を観察して、集団に共通する疾病の 原因を究明し、疾病を予防する学問」という定義はどうか? ◆津田=疫学は、個々人を観察し、原因を究明し、予防にも役立 てる学問だ。 ◆田中=個人の因果推論をやっている論文はあまり見当たらない。 ◆津田=日本語(の論文)では駄目。英語では山ほどある。 ◆田中=日本の学会では少数説では? ◆津田=そうは思わない。 ◆田中=事象と要因との関係は複雑なので慎重に判断すべきでは? ◆津田=食中毒のように性急に対策を取らねばならぬ場合もある。 タバコについては(肺癌等の原因として)微動だにしていない。 ◆田中=(時間が無いので)答えだけを手短に。 ◆伊佐山弁護団長=証人はきちんと答えていると思う。専門家に イエス・ノーだけ答えさせるのはおかしい。 ◆田中=乙号証の土屋氏は「疫学で何でも解決できる、というの は間違っている」と言っている。 ◆津田=土屋氏は既に亡くなっており、現代疫学を知らない人だ。 ◆田中=疫学に限界があると考えるか? ◆津田=ある。疫学データが十分揃っていない場合だ。しかし、 それ以外の方法論は無いので、限界の定めようが無い。 ◆田中=疫学の教科書に載っているものとは違うんですね? ◆津田=きちっと議論されて結論が出ている。 ◆田中=前回、証人は「因果関係」という言葉を多用しているが、 それは「疫学的因果関係」ということか? ◆津田=そうだ。 ◆田中=寄与危険度割合について。1000人中で曝露群100人、非曝 露群30人が発症した場合、100分の70(100−30)が曝露(危険因 子にさらされること)によって発症した、ということか? ◆津田=そうだ。 ◆田中=曝露がなくても発病した者かどうか判るか? ◆津田=それは確率論的に見るしかない。 ◆田中=それが判らなければ、個人の因果関係は判らない、とい う事にならないか? ◆津田=いや、米などでは寄与危険度割合を基に補償等を考えて いる。(限界があるとすれば)疫学というより医学の限界だ。 ◆田中=疫学の目的から外れたこと(個人の発病の原因を追究す る)をやるからそういう無理が生ずるのではないか? ◆津田=いや、疫学は個人の原因をも追究するものだ。 ◆田中=基礎医学と疫学の分担について。乙号証土屋氏の論文に よれば、疾病の原因を論ずる場合、2つの考え方がある。細胞レ ベルで考えるのが基礎医学、(発病因子の)伝播・入った経路で 考えるのが疫学、ということだが? ◆津田=こんな珍妙なことを言うのは土屋さんだけだ。病気の有 無は臨床医学で、曝露の有無は疫学で考える。 ◆田中=臨床の助けを借りない疫学は精度の低いものになります ね? ◆津田=全ての疫学は臨床の助けを得ている。 ◆田中=食中毒の場合、原因施設・病因物質・原因食品の特定が 重要だが、仮に0−157が病因物質とされた場合、結果的に菌 が発見されなかったら、判断を誤った、ということになるのか? ◆津田=「菌が全くない」という証明はどうやってするのか? ◆山口=(田中)先生、やはり仮定の話は駄目ですよ。 ◆田中=前回の証言で、証人は肺癌発生のメカニズムで、喫煙以 外の要因を無視しているのではないか? ◆津田=タバコ以上の交絡要因は見つからない。 ◆田中=癌発生のメカニズムは複雑だ。 ◆津田=癌は人体の中で作られる蛋白質で、DNAで作られる。   <速記者交代> ◆山口=「メカニズム」という言葉が解らないまま訊いている。 ◆田中=癌発症のメカニズムは? ◆津田=発癌物質が細胞に作用して、(発病者が)癌によって亡 くなる、というのがメカニズムだ。 ◆田中=発癌物質以外に、放射線でも癌ができますよね? ◆津田=あなたは放射線で癌ができることは認めているのか? ◆田中=私の方が訊いている。 ◆津田=それを認めているなら、タバコと肺癌の関係もすぐ解る。 ◆田中=喫煙と肺癌ではタバコ以外の交絡要因は? ◆津田=年齢・性別。予防効果としてβカロチン・ビタミンC等。 ◆田中=大気汚染も交絡要因では? ◆津田=喫煙者・非喫煙者とも曝露されているから同じ。交絡要 因の定義をご存じか? ◆田中=私の方が質問している。 ◆津田=交絡要因の定義が解れば無駄な質問をしなくて済む。時 間・コスト・手間が無限なら、あらゆる交絡要因を調べられる。 弁護士さんが「交絡要因」と言っているのは、「交絡要因候補」 のことだ。 <14:53 休憩/15:03 再開> ◆田中=ある非特異性疾患の原因がA50%・B70%・C80%であ  った場合、原因を特定できるのか?    ◆山口=誤導になる。    ◆裁判長=もう、この質問やめましょう[傍聴笑い]。傍聴の方、 笑ったりしないで下さい[傍聴失笑]。    ◆田中=喫煙率の高い日本男性の肺癌死亡率が、欧米に比べて低 いのは謎だ。 ◆津田=それは人種を交絡要因とすればよい。米公衆衛生総監が 既にやっている。 ◆田中=津田意見書では「米公衆衛生総監によって、喫煙と肺癌 の関係の論争は、疫学的にも医学的にも終結する」とあるが、わ が国のたばこ事業審議会の結論は「病理学的には、喫煙と肺癌の  関係について今後の研究に待つものが多い。喫煙と肺癌の関係は 簡単に結論づけられるものではない」となっている。    ◆津田=病理学は曝露の因果関係を論じるものではない。それは  足し算ができない人が微分積分を論じるようなものだ。この文章 が英文で発表できるか試して下さい。発表されたら驚きだ。 ◆田中=これは専門の委員がまとめたものだ。 ◆津田=委員の名前と業績目録を開示してほしい。そうでないと 専門家と呼べない。 ◆田中=先生は大阪高裁で証人として意見書を提出したが、裁判 で先生の考え方は採用されなかったのではないか? ◆津田=国賠訴訟ではよくあるケースだ。結審間際に被告が程度 の低い雑文を書証としてパッと出す。それで反論の余裕が無かっ た。間際の論文で(裁判所が)騙された。この裁判でも結審間際 にポッと出すようなことはやめてほしい。 ◆田中=タバコは食品衛生法に言う食品に該当するか? ◆津田=食品には該当しないが、薬品としては考えられる。 ◆田中=諸外国で証人のような考えに基づいて(タバコが)回収 されたことは? ◆津田=それは無い。 ◆田中=喫煙の健康影響は疫学では常識か? ◆津田=医学者の間では常識だ。 ◆田中=彼らはリスクを承知で喫煙を選択している、ということ か? ◆津田=いや、いろいろ複雑な問題がある。 ◆田中=タバコは、リスクはあるが国民に受け入れられている物 では? ◆津田=リスクは十分には知られていない。 ◆田中=日光浴でも癌になるからと言って、国が日光浴を禁止す るのはどうか。 ◆津田=十分情報を与えるべきだ。パッケージに(害を)表示す べきだ。[タバコ(マイルドセブン・ライト?)の箱を掲げ]久  しぶりにタバコを買ったが、これでは駄目だ。    ◆裁判長=[JT田中に]以上でよろしいですか?    ◆田中=はい。    ◆裁判長=国の方はどうですか?    ◆被告国代理人=結構です。    ◆山口=英では喫煙対策で肺癌が半減した。JTは「喫煙と疾病 の関係を断定できない」と述べている。こういう姿勢はどう思う か?   ◆津田=喫煙については、米の公衆衛生政策でさえ失敗したと言 われている。日本は失敗どころか試みもしていない。日本でも未 成年の喫煙率を直視してほしい。TOTOでもきちんと対面販売 をしている。厚生省はタバコ対策が不十分だ。薬事法のようなも ので規制しないと。含有ニコチンの表示値と実測値が違うという ことも発表されている。 ◆伊佐山=国(厚生省)はタバコを家庭用品規制法の対象外と主 張していたのに、インターネットによると対象として考えている。 この点の食い違いをきちんと釈明してほしい。 ◆被告国代理人=反論するかどうかも含めて検討させて下さい。 ◆JT岩淵=病理学の点から蟹沢証人を、他に疫学の証人を1名 申請する。原告申請のワイガンド証人には反対する。米の状況は 当方には関係ない。JT社長の喚問には更に強く反対する。不法 行為訴訟なので、社長よりも実務に明るい幹部の方がふさわしい。 ◆伊佐山=単なる過失責任の訴訟ではない。本田社長はJTに何 十年も勤めて支えた人だ。ワイガンド証人も是非認めてほしい。 ◆裁判長=では、次回は蟹沢証人の主尋問で。<16:08 閉廷> ■アトリビュータブル・リスク(寄与危険)=危険因子に曝露された集団からの 発生(罹患・死亡)率と、曝露されない集団からの発生率との差。人口当たりの 率で表わす。この指標は危険因子への曝露により疾病異常の発生が単位人口当た りどれだけ増えたかを示す(相対危険)。従って危険因子が集団に与える影響の 大きさを表わし、公衆衛生上の問題の大きさを示す指標としての意味をもつ。 ■交絡因子=調べようとする危険因子以外の表面に出ない背景因子で、疾病の出 現頻度に影響を与えるもの。背景因子が交絡因子であるためには、分布が調べよ うとする危険因子曝露群と非曝露群で異なり、その背景因子自体が結果に影響を 与える、という2つの条件を満足させなければならない。  [以上、南山堂『医学大辞典』] ★和田アキ子が「タバコやめたい」と禁煙法募集(賞金付)  →〒810-8655 福岡放送「新型テレビ」宛 ■ニコチンガム「ニコレット」(武田薬品・ファルマシア社)が 9月10日より大衆薬(一般用医薬品)として処方箋なしで買えるよ うになります。単に入手しやすくなるというだけでなく、常習喫煙 がニコチン依存によるものだと周知させる効果が期待できます。喫 煙者の間でもかなり話題になるものと思われ、注目! 《日程》 ▼8月18日(土)〜19日(日)=全国禁煙教育研修会・18【静岡】 ▼8月24日(金)18:30=分煙定例会【ひまわり館】職場・バス停 ▼9月21日(金)18:30=分煙定例会【富士見区民館】会場注意! ▼9月25日(火)10:00=たばこ病訴訟・18【東京地裁627】 ▼10月27日(土)14:00=千葉の会勉強会【船橋中央公民館】職場煙害 ▼11月27日(火)13:30=たばこ病訴訟・19【東京地裁627】