『分煙壁新聞』第29号[P]2001年10月15日 発行:分煙堂本舗/分煙社会をめざす会 〒115 東京都北区神谷3−28−12−2B Tel&Fax=03-3901-7131 ■たばこ病訴訟の第18回口頭弁論が9月25日 10:00、東京地裁 で行なわれた。荒木・山本両原告と弁護団9名が出廷。被告J T側の蟹沢成好(まさよし)証人に対する主尋問が行なわれた。 ◆裁判長=原告からの「津田敏秀氏を補佐人に」という申請に対  しJTが反対したが、検討の結果補佐人ということを許可する。  ◆蟹沢=(JT竹野下喜彦代理人の質問に答える形で)乙171号証 「意見書」は自分が作成した物だ。職歴は、千葉大医学部卒業後、 1972年迄は同学部に勤務し、72〜81年東京都老人総合研究所、81  年から横浜市大病院に勤務。病理組織診断の専門家で病理学会・  肺癌学会等の評議員をしている。喫煙と肺癌の関係も専門分野の  一部。98年4月よりJTの顧問として勤務(非常勤委嘱者)。週  1回JTに出社し、医学的問題について意見を求められた時に申  し述べる。癌の原因を同定するのは困難だ。喫煙と肺癌を高い確  率で結びつけるのは、さまざまな点が明快になっていないので、  病理学的には大きな疑問である。 ◆山口原告弁護団事務局長=聞き取りづらい。    ◆JT岩淵代理人=なるべく直接やりとりしないように。    ◆山口=聞こえないんじゃしょうがない。    ◆裁判長=(証言の)最後の方、聞こえなかった。    ◆蟹沢=喫煙が肺癌の原因であることは認めるが、未解明の部分  が多く、肺癌発生を全て喫煙で説明するのは無理がある。    ◆山口=も少しゆっくりと。    ◆蟹沢=臨床的に最終判断がつけがたい疾患は病理学に頼ること  が多い。例えば肺癌と肺結核の区別など。病理学的判定なしの疾  病診断には誤りが少なくない。4百数十例の診断を検討した結果、 44%に誤りがあった。呼吸器癌には33%に誤りがあった。臨床医  の診断には少なからず誤診がある。発癌物質の多くは体内吸収の  後さまざまに変化する(活性化)。これを間接発癌と言い、タバ  コは間接発癌だ。<10:20 津田補佐人入廷>     活性化の能力は個人差があり、高ければ癌になり易い。実生活  の発癌物質(の危険)はそう高いものではない。また、癌の発生  には多要因がある。ある場合は相加的、ある場合は相乗的に作用  する。動物実験での発癌が人にも当てはまる訳ではない。人は人  なりの検証が必要だ。通常の社会生活では、人の発癌原因の特定  は困難だ。量的なものを一人一人について識別するのは難しい。  個人差もあり、多要因でもある。発癌感受性(癌のなり易さ)は  実験動物と人で違う。実験動物は遺伝子が均一化された均衡系で、 癌が発生し易い、しにくい動物が存在する。人は個体差が大きい。 酒に酔い易い、酔いにくいは個人差、遺伝子の差。アルコール分  解酵素には民族差・人種差がある。発癌にも地域・国・民族の差  がある。死亡率・死亡数中心の統計には問題がある。日本では死  亡率は肺癌が1位だが、発生率は胃癌が1位。罹患率・罹患数で  見るとはっきりするが、死亡率では見失う恐れがある。     肺癌にはP53遺伝子(癌抑制遺伝子)が関与している。これ  には個体差がある。現時点では遺伝子多型の全貌は明らかになっ  ていない。肺癌は必ずしも喫煙だけが原因ではない。都市住民・  自動車運転者・工場労働者等に高い。喫煙だけに注目していいの  か。<11:00 法廷速記者交代>     癌とタールの関係は、兎の耳にコールタールを塗って発癌させ  たのが1913〜14年。また、マウスの皮膚に濃縮されたタバコのタ  ールを塗布して44%に皮膚癌が発生したが、人と比べて濃度・投  与形式等の違いがある。喫煙で肺癌の発生が証明された訳ではな い。1960年代以降、動物も喫煙方式で実験しているが、有意の成 績に至っていない。吸煙研究で喫煙と肺癌の関係が得られないの で、既知の発癌物質を予め投与しておいて肺癌の発生を調べると 単独投与より高い発生が得られた。喫煙は他の発癌物質を補佐す 形で関与している。タールの中にはベンツピレン等さまざまな発 癌物質がある。犬を使った実験では、120mgという大量の発癌物質 を注入して肺癌の発生を見たが、実生活ではナノグラム(10億分 の1グラム)のレベルだ。ニトロサミンも皮下注射等で大量に投 与すると腺癌ができるが、喫煙で消化管から吸収される実験の場 合は、肺癌も他の癌もできない。  以上、総括すると動物実験では喫煙と肺癌の有意な結果が出て いない。喫煙で肺癌が発生するという証明にはなっていない。 「肺癌の最大の原因は喫煙である」というのは疑問だ。肺癌の増 加は高齢者の急増が大きな要因。長年に渡った様々な要因の曝露 があり、その結果として肺癌が発生する。喫煙率の高さが肺癌発 生の高さの原因と言えるだろうか。喫煙は癌発生の要因ではある が、現実には喫煙率が低下しているのに肺癌発生が増加している。 考えられる原因は、工業化・排ガス。これらの影響を除外して喫 煙で肺癌発生を説明するのはおかしい。  疫学調査では(肺癌のうち)偏平上皮癌・小細胞癌が喫煙との 関係が高いと言われている。「肺癌」と一括りして喫煙と結びつ ける報告がしばしばあるが、病理学的検索が欠けている場合は問 題がある。日本とノルウェーの肺癌発生(の推移)は似ているが 喫煙(率の推移)は大きく違う。スウェーデンは肺癌が減ってい るが、米は90年迄は増えている。喫煙だけでは説明しきれない。 特に米では喫煙と肺癌の関係は検討し直す必要がある。    非喫煙者の肺癌の増加について。受動喫煙が非喫煙者にどう関 与しているかは成績にバラつきがある。受動喫煙の濃度は低い。 非喫煙者が喫煙者の吐き出す煙を全て吸入している訳ではない。 1コンマ数倍から2倍で高い割合ではない。ゼロとは言わないが。 大気汚染も動物実験で有意な結果が出ていない。こちらも確たる 証拠が無い。最近、肺の中のタールの研究で、大気汚染か喫煙か の由来が大気汚染にあるという結果が出ている。いずれにしても 多要因だ。肺癌の発生を喫煙だけで説明するのは無理がある。  疫学の問題点。肺癌の要因の同定には詳しい検索が必要だが、 それは困難なので疫学の手法を使うのは事実。しかし、喫煙の寄 与率が高いということを疫学だけで認めて良いのか。基礎・臨床 医学と相俟って判断すべきだ。疫学で決めるのには賛成致しかね る。 ◆山口=語尾が分からない。 ◆蟹沢=賛成致しかねる。(原告の主張は)喫煙にこだわるあま り大気汚染を軽視している。人の癌の原因(の解明)は、1900年 以来努力してきたが、未だに癌は増えるという現象もしばしば見 られる。癌の原因を同定することは難しい。単一ではない。なお 多くの研究を必要とする状況だ。発癌のメカニズムがいかに複雑 か。喫煙が(原因の)大部分であるという主張に対して、大きな 疑問を感じる。現時点ではまだ多くの問題を解明しなければなら ない。<11:52> ◆裁判長=原告JTから大河(喜彦JT常務)証人の申請が、原 告からはワイガンド・本田(勝彦JT社長)両証人の申請が出さ れている。裁判所としては今のところワイガンド証人の予定はな い。次回は蟹沢証人の反対尋問を行なう。13:00〜16:00で。 ◆伊佐山原告弁護団長=かなり反論があるので、17時ぐらい迄い ただけるか?   ◆JT岩淵=こちらも今迄(反対尋問の時間を)切り詰めている ので(16時迄に終えてほしい)。   ◆山口=お約束は致しかねる。極力努力するが、今日の尋問はあ まりにひどすぎる。原告代理人の津田医師は「これから(自分の 反対尋問を)何時間やられても、どんどんやられても構わない」 と言っている。  <12:00 閉廷>   ★たばこ病訴訟「第2次原告」募集中!:喫煙がもとで肺癌・肺 気腫・喉頭癌になった方、またそういう方をご存知の方、将来の 被害者発生をくい止める為にも、何卒ご連絡下さい。遺族の方で も可。毎回出廷する必要はありません。詳しくは下記にご相談を。 たばこ病訴訟を支える会:〒102 千代田区飯田橋2-1-4 九段 セントラルビル203/Tel.03-3222-6781/Fax.03-3222-6780   ■日本医師会では、本格的に禁煙活動に取り組み始めていますが、 日医会館が7月10日にやっと禁煙になったことでも判るように、  医師の団体としてはまだ不十分。ぜひ叱咤激励を送って下さい。   日本医師会:Tel.03-3946-2121/〒113 文京区本駒込2-28-16 ■この度、「さがみ分煙社会をめざす会」が発足しました。例会 &相談会も開いていますので参加希望の方はご連絡下さい。   ※連絡先:綾瀬市綾西1-15-2/Tel.Fax 0467-76-6264   《日程》   ▼10月27日(土)14:00=千葉の会勉強会【船橋市中央公民館】   ※「職場の煙害を考える」\300(会場費・資料代)   ※船橋市本町2-2-5/船橋駅から南へ5〜7分 ▼11月4日(日)13:00=全国化学物質過敏症患者会 /\1000  【国民生活センター】品川駅5分/港区高輪3-13-22 ▼11月16日(金)18:30=分煙定例会【富士見区民館】\200    ※千代田区富士見1−6−7/飯田橋駅4分・九段下駅7分 ▼11月27日(火)13:30=たばこ病訴訟 【東京地裁627】 ▼1月29日(火)13:30=たばこ病訴訟 【東京地裁627】