分煙壁新聞・第36号[P] 2003年5月31日   分煙堂本舗・編集/分煙社会をめざす会・発行 〒115-0043 東京都北区神谷3−28−12−2B Tel・Fax=03−3901−7131 ■東京地裁「たばこ病訴訟」が結審  5月27日、たばこ病訴訟第27回口頭弁論が行なわれ、満席  (立ち見5名)の傍聴者が見守る中、荒木・山本両原告と弁護団  9名が出廷した。原告と被告国及びJTが最終準備書面を提出。  5年間の裁判を総括する最後の弁論が行なわれた。<10:00>   ◆伊佐山弁護団長=JTは「未成年喫煙防止に取り組んでいる」  と主張しているが、新たに米国からこれに反する情報が入ってき  た。それは「未成年への売込みの証拠を残さないように」等と指  示する内容のものだ。    ◆浅香紀久雄裁判長=調べる必要があるかないかの問題だが。   ◆被告JT岩淵代理人=(新たな証拠調べをせず)予定通り進め  ていただきたい。    ◆被告国代理人=内容を読んでみないと……。    ◆裁判長=では、証拠調べの対象とはしないが、読むということ  で。    ◆荒木照夫原告団長=私の肺癌は一番悪い小細胞癌で、酸素吸入  をしている。「タバコは体に悪い」というが、真剣には言われて  来なかった。裁判所は私のような被害者を出さないために、箱に  「害がある」と明記するよう命令して下さい。最後に、タバコで  亡くなられた多くの方の霊に祈りたいと思う。    ◆山本又男原告=タバコ規制枠組み条約(FCTC)がWHO総  会で採択されまた5月31日は禁煙デーということで、禁煙の気  運が高まっている。私は肺気腫だが、この病気の98%が喫煙者  だ。タバコはJTが言うような「長年認知された嗜好品」では絶  対ない。年9万5千人の死は重大で、私は生き証人だ。たばこ事  業法でJTを手厚く保護している国・財務省は殺人の共同謀議者  だ。裁判所には被害者の期待に応える明確な判例をお願いする。  ◆伊佐山=本訴訟は、膨大な数のタバコ病を発生させているJT  の責任を問うものだ。情報を隠蔽し、枠組み条約を妨害する財務  省の責任を問うものだ。一片の通達などを出すだけで有効な対策  を取らなかった厚生省の責任を問うものだ。喫煙と肺癌の関係で  1940年頃から多くの疫学研究がなされてきた。喫煙は肺癌の  重要な危険因子だ。喉頭癌にたいする寄与危険度はほぼ100%  だ。去年の『タバコ白書』でも指摘されている。7万以上の科学  論文で、喫煙が重大な健康被害を与えていることは疑う余地がな  い。年間の喫煙による死者9万5千人は、全死亡の12%だ。こ  れは米貿易センターの航空機テロが毎年31回以上起きていると  いうことだ。     JTが出した「ニコチンの依存性は弱い」という柳田知司論文  は数字操作をしており、事実に反する。喫煙と肺癌・喉頭癌・肺  気腫の因果関係は世界的に明らかだ。米フィリップモリス社もこ  れに同意している。疫学を「集団が対象で個人は対象としない」  「予防が目的で訴訟の為のものではない」とするJTの主張は謬  論だ。これは疫学に拠った他の判例を否定するものだ。疫学デー  タで得られたものを個人に当てはめる「原因確率」は科学の常識  だ。JTは疫学を知らずに疫学を批判している。     JTの違法性は、毒の缶詰ともいえるタバコを販売しているこ  と、虚偽の表示をしていること、子供をターゲットにしているこ  と。また情報隠しの違法性。国の違法性は、厚生省が年9万5千  人のタバコ死を報告しているのに、法廷内では(タバコの害の)  認否すらしないこと。WHOはしばしば警告を出しているが日本  は対策を取っていない。JTは死の商人だ。国はJTの拡販を長  年放置し、膨大な被害者を生じさせた。<10:50>   ◆片山律弁護士=違法性について。JTは1950年代から有害  性の認識を、60年代から依存性の認識を持っていた。64年の  米公衆衛生総監報告は国・専売公社も十分検討しており、認識し  ていた。タバコは通常の方法で使用して被害の生じる製品だ。も  し後になって気づいたとしても、販売中止をすべきだ。タバコに  は依存性があり、本人の意思でやめられない以上、JTは喫煙者  を元の状態に戻さなければならない。米の和解では「タバコはニ  コチンの摂取器具」とされている。国はJTの大半の株を持ち(  実質的に)経営を行なってきた。先進諸国で有害表示・広告規制  が進む中、国は72年「健康のため吸いすぎに注意」、90年「  あなたの健康を損なうおそれがある云々」と全く不十分な措置し  か取らなかった。国民の安全・健康を守る義務に反している。   ◆JT岩淵=喫煙の健康影響について公衆衛生の観点から種々議  論があることは承知しているが、本件は不法行為を問うもので、  それを混同してはならない。本件は反喫煙運動の性格を持ってい  るが、それと民事上の不法行為を混同するな。原告は公衆衛生上  の書証を出しているが、それと訴訟は別だ。違法性の立証は十分  ではない。JTがどの時点でどうすべきであり、それをしなかっ  た為に原告が発症したという論証をすべきだ。     私らも疫学は否定しないが、疫学で直ちに不法行為は論証でき  ない。タバコは酒・お茶と並ぶ代表的嗜好品で、合法的商品。そ  れを前提に判断すべきだ。原告は米訴訟を参考にしているようだ  が、米の個人喫煙者の訴訟は2千件くらい提訴され、原告勝訴は  極めて少ない。それも陪審制とか懲罰的賠償とか内部文書の暴露  とか、米特有の状況を反映したもので、我国の参考にならない。  時効の問題もある。差止め請求は具体的要件が判然しない。    ◆JT金丸=JTのタバコ販売には何ら違法性・過失はない。原  告の「タバコは猛毒」という主張は定量的側面を無視している。  喫煙で体内に取り入れられるのは微量だ。ニコチンの精神依存性  は弱く、身体依存性は極めて弱い。「柳田論文は数字操作」とい  うのは曲解だ。医学的因果関係の有無は別として、タバコの身体  的リスクは古くから認識されており、喫煙者は自由意思で吸って  きた。JTは内外の情勢・知見を踏まえ、委託・助成研究等をも  行ない、適切に対応してきた。表示も法令で認められたものだ。  個別的・具体的因果関係の立証責任は原告らにある。「疫学で証  明できる」と言うが、高度の蓋然性は証明できない。<11:08>   ◆裁判長=これで終了する。判決は10月21日10時とする。    ※国は「原告の主張に、『大臣にどういう義務があり、どう    したら発病を防げたか』という具体的な指摘がない(から棄    却判決備書面を提出。 ………………………………………………………………………… ★新刊案内『やめる禁煙、治す禁煙』薗(石川)はじめ著/ 大月書店/1400円 ※著者は「Pink」さんとして運動仲 間に知られている医師。一般人にも分かり易い内容です。 ■松崎医師が証言〜江戸川区職場煙害訴訟    5月26日、東京地裁で松崎道幸医師(深川市立病院内科医長  )の証人尋問が行なわれた。松崎氏は河村昌弘原告の質問に答え  る形で、受動喫煙(以下PSと表記)の害について証言した。   ◆松崎証人=私は『喫煙と健康問題に関する検討会報告書』(タ  バコ白書/2002年)の検討会メンバー。同報告は「公共の場や職  場での分煙の徹底及び効果の高い分煙についての知識の普及」(  序文の一部)等、今後のタバコ対策に資する為に書かれた。その  執筆者の一人で、PSの慢性影響について執筆した。専門は呼吸  器内科なので、肺の病気の方を診ている。肺はいったん害なわれ  ると元に戻らないので、大変負荷がかかる。SARSの例でも致  死率が高い。PSの成人・小児への影響について幾つか論文を書  いている。PSは、自分は吸わなくても他に恐ろしい影響がある  ということで研究するようになった。国の研究をまとめる作業等  もしている。厚生省からも問合せがあり、私の喫煙に関する知識  はスタンダードなものと言える。     PSの影響について、97年のカリフォルニア州環境保護局の  報告に私の知見を加えてまとめたものを(OHPで)示す。     [10万人当り]   *胸部レントゲン1枚で肺癌死  0.05   *郊外に住みディーゼル排ガスで癌死  3     *今のレベルのダイオキシンで癌死 91     *大都会に住みディーゼル排ガスで癌死    300     *お茶の間のPSで肺癌死   1000     *職場のPSで肺癌死   2000     *居酒屋のPSで肺癌死   7500     *日常生活のPSで死亡※ 5000〜15000     (※肺癌+心筋梗塞+脳卒中+気管支喘息など)     私の患者にも喘息などPSの影響を受けている人がいる。厚生  省は喫煙による死亡は年9万5千人としている。全死の約1割が  喫煙で亡くなる。国立がんセンターの山口直人氏によれば、PS  による肺癌で年900人(男600人・女300人)が死亡する。因み  に殺人事件の死者は1300人位と聞く。タバコのリスクは長期  に渡るので、相応のリスク計算が必要だ。都大気汚染訴訟では疫  学調査を基に因果関係を認めた。     原告はPSにさらされて副鼻腔炎や急性咽頭炎にに罹ったと言  える。その後、PSのない職場に移って症状が改善したのもPS  の影響があったことを示す。血痰等の症状もPSの影響。原告の  診断書は信頼に値するものだ。喫煙と椎間板ヘルニアの関連も最 近明らかになっている。長時間咳込むとヘルニアになる可能性が ある。原告がPSを避ける為、空気清浄機の吹出し口で呼吸しよ うと不良姿勢をとったことで、椎間板ヘルニアになった可能性が ある。被告は加齢のせいと言うが、原告はヘビースモーカーでは なく、生活習慣病でもないので、関係ないと思う。ETS(環境 タバコ煙)によって疼痛が増すのは十分考えられる。血液不足・ 酸素不足等による。原告がタバコ煙のある所に出張すると痛みが 出るというのは、関連性を示すものだ。  シックハウス症候群の原因物質のうちホルムアルデヒド・トル エン・スチレンがタバコ煙に大量に含まれる。PSで化学物質過 敏症が起きたことは十分考えられる。PSの影響を防ぐには完全 禁煙しかない。不可能ならSARS患者と同程度の0.2m/秒 の引圧室が必要。これは厚生省の基準だ。これは費用がかかるの で、PS対策では完全禁煙以外ないのではないか。  江戸川区の状況では職員にETSの影響があったと思われる。 原告だけ発症したのは感受性の差で、特異体質ということではな い。公衆衛生に携わる者はETSのことを認識しなければならな い。10年ほど前からETSはトップレベルの危険因子と指摘さ れている。(江戸川区の公衆衛生)担当者がそれを知らないのは 個人と行政の怠慢だ。喫煙者がタバコ対策をするのは困難だ。  タバコの依存性はハードドラッグ並。自分の喫煙行動を制御で きないのはニコチン依存の症状だ。PSの被害が甚大で、ニコチ ン依存で適切な判断ができない喫煙者も多いことを見ると、非喫 煙者の被害を防ぐ決まりが必要。 タバコ産業から金を貰ってい い加減な見解を述べている学者・研究者は国外でも国内でも過去 も現在もいるが、FCTCでは「科学的に余す所なく断定的に喫 煙・PSが疾病・死亡をもたらす」と書かれている。PSをなくす 強制力ある法的措置が必要だ。 ◆被告江戸川区・木下代理人=原告をじかに診察したことは? ◆松崎=ない。 ◆木下=江戸川区役所に行ったことは? ◆松崎=ない。 ◆木下=頸部椎間板ヘルニアは専門か? ◆松崎=専門外だが、小さな病院なので何でも診る。(原告の再 尋問に答えて)江戸川区役所の写真・平面図で大体の様子、PS の状態は判る。 ※次回は6月23日(月)13時20分721法廷。元係長の尋問。 (一部に「次回は8月1日16時」と報じましたが、これは次々回 日程でした。訂正します)。  ★定例会へどうぞ 6月20日(金)18:45〜 「健康増進法」について   ※どなたでもご参加下さい。遅刻・早退自由。    周辺は路上禁煙地区(反則金2千円)です。   参加費300円/煙害相談にも応じます 書籍・グッズ格安販売/2次会もあり  ★『空気のおいしいレストラン&カフェ ガイド』(ほんの木) 5月出版予定でしたが、少し遅れることになりました。予約 された方、申し訳ありませんがいま暫くお待ち下さい   ●本体予価1400円 ●東京・横浜・鎌倉など足で調べた二百数十店 美味しくて気持ち良い店厳選 予約申込は「ほんの木」迄(代金後払い) Eメール info@honnoki.co.jp